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コロラド遠征報告 2006年2月28日〜3月10日 アメリカ コロラド州 ヴェイル(Vail Colorado USA) |
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コロラド ヴェイル。1994年、ジェフ・ロウによって開かれたオクトパシーにより、一躍有名になったこのゲレンデを、まさか私が訪れようとは。それまでオクトパシーの名前は知っていても、私にとっては夢の中の話であって、まさに神の領域といっても過言ではない、そんなイメージであった。しかしオクトパシー初登以降、ミックスという新たな概念の確立と、アイスギアの革新に伴う技術の発展は目覚しく、現在では、カナダにある“ムサシ”など、オクトパシーをはるかにしのぐグレードのルートが登られている。またグレードも、オクトパシー初登時M8(Mはミックスの意味 8はそのルートの難しさ)はフリークライミングに使われているデジマル方式では5.13に相当するといわれたが、現在の技術革新により、M8は5.11d〜5.12aというところで落ち着いている。ということは・・・。 などとくそまじめに前置きを長々と書きましたが、だとすれば、オクトパシーレッドポイントも夢ではない!ということで、行ってきました!!コロラドへ!!! |
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出発 日本出発は2月28日。メンバーは、今回の計画の言いだしっぺ篠原さん、それと去年一緒にヨセミテへ行った梶山さん、私の3人。いずれもJAGUの現役メンバー。成田集合後、膨大な量の荷物をチェックインカウンターへ押し込み、とりあえずレストランで乾杯。ほろ酔い加減で飛行機に乗り込むも、毎度毎度の狭いエコノミーでは、安眠など夢のまた夢・・・。さらにトランジットのサンフランシスコでは、乗り換え時間が1時間しかなく、慌しく入国検査から荷物のピックアップと再チェックインをこなし、約10時間でデンバーへ到着。体は徹夜明け状態で早くもお疲れモード。とりあえずレンタカーを借りて空港をあとにし、近くのモーテルへ。この日は“おやすみなさい”という感じでした。 |
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今回の愛車 シボレー4WD | |||||||||||||||||||
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ヴェイルへ 明けて3月1日、いよいよヴェイルへ向け出発。デンバーからヴェイルへは、インターステート(注 ハイウェイとは違うが、日本で言うところのいわゆる高速道路) 70号線をひたすら西へ向う。途中3000mの峠を2つ越えるが、なんだか日本で見る風景と似たような感じがする。さしずめ中央道を八王子から甲府へ向って走っているような感じだ。車中でも、「こりゃーアメリカ版中央道だー、ここは大月辺りを走ってる感じだなー!」などと冗談しきり。しかし、一つ目の峠を越えたところで、雲行きが怪しくなってきた。そのうち雪がちらほら舞い始め、いつしか本降りに。なんと来て早々雪道のドライブかよー!しかも左ハンドル車で!!「うーん、ワイパーはどこだー?!」 それでも何とかヴェイルへ到着。デンバーから約3時間ちょっとのドライブだった。さてさてヴェイルの町はというと、コロラドでは有数のスキーリゾートで、きれいに整備された町並みはこれまた日本の白馬か湯沢かといった感じ。物価までもがやはり観光地並みで、宿を探すが、みな高くて泊まれるような代物ではない。仕方なくさらに西へ下ることとなった。 さらに下ること20分。イーグルという小さな町に着いた。インターを出てすぐのところにちょうどモーテルがあったので、入ってみた。なんともおしゃれな玄関の上には四つ星!そしてきれいなフロントには暖炉があり、いかにも高そうだ・・。恐る恐る値段を聞くと、一人約$65。んん、そんなに高くないぞ??しかも朝食付き!?全員一致でここに泊まることに。 こうして僕らのコロラドクライミングが始まった。 |
デンバーの夜明け インターステートのドライブ風景 |
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ヴェイルのビジターセンター ヴェイルビレッジ 今回の宿アメリックイン |
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リジッド・ディジグネイターエリアの全景 中央の氷瀑がリジッド・ディジグネーター 右の細い氷柱がファング |
リジッド・ディジグネイターのエリア 今回の目標であるオクトパシーが存在するエリア、リジッド・ディジグネイター“円形劇場”。その名をつける大氷瀑と、ファングなどの有名なアイスフォールを有する・・・。 またまたかっこよく書き出してしまいましたが、かっこつけたくなるような、なかなかのゲレンデです!しかしそんなすごいイメージとは裏腹に、民家のすぐ裏というなんとも羨ましい限りのロケーションで、アプローチ時間は、車を降りてなんと30分!インターステートを走ってても、すぐにあれと分かるくらい近くに見えます。んー、コロラドの連中が羨ましいゼ。 3月2日朝9時に宿を出発。スーパーで食料を買出し、一路ヴェイルへ。アプローチはまず、アスペンStのとても立派な民家が連なる道に車を路駐し、その立派な民家の軒先から、裏に走っているクロカン用のトレイルにはいる。くれぐれも地元住民とトラブルを起こし、銃で撃たれないように・・・。あとはクロカンのトレイルを東に数百メートル進むと、ヨセミテのカラビナマークならぬ、ピッケルマークの簡単な標識が出てくるので、そこからクライマーのつけたトレースに沿って登っていく。時差ボケの体にはちときつかった! |
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しかし取り付きにつくと、今年の結氷状態はあまりよくないように見える。特に本命のオクトパシーはというと、タコの足というよりは、スルメの足のように頼りなくみえた。ファングも上半分は直径1メートルもないグズグズのシャンデリア。これには期待が大きかっただけにちょっと意気消沈。とりあえず隣のスパイラル・ステアケースのエリアへ移動し、肩慣らしに低い氷を何本か登ることに。 しかし、登りだすとみんな白熱してしまい、次から次へとロープを張ることに。ミックスのルートもトライするが、何せミックス初挑戦。M7ぐらいのクラックルートでトルキングの感覚がつかめず、何度もテンションをかけてしまった。こんな調子で、6日間もつかなー?? |
クロカン用のトレイルを進む |
ピッケルマークの標識? |
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ミックスのクライミング 3月3日前日と同じく9時に宿を出発し、ヴェイルへ。この日はまずスパイラル・ステアケースでアップした後に、リジッド・ディジグネイターのエリアへ移動。いつになくにぎわう“円形劇場”でひときわ目立つクライマーがいた。羽毛服でビレイする我々をよそに、一人半そでの薄いシャツで、そこらじゅう登りまくっている。(落ちるときもかなり派手だったが・・・)ここらの新しいルートについてまったく無知な我々は、彼にルートやグレードについて質問しまくった。しかし、たいてい彼の返事はI don't know !“俺が知るかよー。おそらくM6くらいじゃねーかなー。けどここはすんげー面白れールートだぜー。登ってみろよー!”(注 ニュアンス的にはこんな感じでした。)。 そのうち篠原さんがM6の新ルートに取り付いた。「悪いなー」といいながらも、危なげなくオンサイト。物怖じしている僕に「リードしてみたら?」と一言。という訳でやってみましたよ。ミックス。リードで。いやー怖かったー。なまじ傾斜のないルートだけに、落ちたらアイゼン引っ掛けて怪我するなーとか想像しちゃって、たまらなくきんちょーしまくりで登りました。それでも何とかテンションなし、フォールなしで登りきり、フラッシュすることができた。 しかし、たった2日間のクライミングだけで、体はもう3人ともボロボロ、時差ボケも手伝ってモチベーションもいまいち。という訳で、次の日の3月4日はオフということになりました。 |
スパイラル・ステアケースを登る |
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初のミックスをリードで! |
リトル・サングはトップロープで |
セブンス・テンタクル フィギアフォーをかけるが届かず |
結局このようなムーブで登りました |
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左上のツララがオクトパシー |
目標のルート オフが明けて3月5日、再びヴェイルへ。このころの我々の一番の関心は、オクトパシーが登攀可能かどうかということだった。オクトパシーは取り付きからみあげると、はるか上のルーフに、チョロリとわずかにツララが懸かっているだけ。あれにぶら下がるのはちょっと怖いなー。しかもこちらに来て、一度もオクトパシーを登っているクライマーを見たことがない。もしかして、もう忘れられたしまったルートなのか?もしかして途中の支点もボルトではなく、初登のままのピトンだったりするのか?なぜだれも登らないんだろう?正直なところ、僕の心の中のオクトパシーは揺らぎ始めていた。 気を取り直し、この日はまずこのエリアの看板ルートでもあるリジッド・ディジグネーターを交代で登った。このルートは看板だけあって、連日順番待ち。僕らも3日目になってようやく順番が回ってきた。ルートは概ね中央の凹角状を登る。しかしこの日は気温が高く、左の氷柱はびしょびしょで、ひっきりなしに水が落ちてくる。氷質は硬すぎず、水氷でもなくちょうどいい。バイルを刺してもバリバリと割れることはない。ロープスケールで約30M。60Mロープでロワーダウンぎりぎりの長さだった。 |
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さて次はどうする?おとといあの元気なにーちゃんが登っていたルートに取り付いてみるか?M6とか言ってたな。だったら登れるだろう。ヌンチャクも懸かっているし。気楽な気持ちで取り付いてみた。しかし、出だしの小ハングからかなりバランシィーなムーブで、パワーを吸い取られる。プリクリップした1本目にたどり着くころには、すでにパンプしまくり、たまらずテンション。「ほんとにこれM6かー?」あとは各駅停車の旅で、何とか5本目までたどり着く。フッキングポイントはしっかりしているのだが、なんともパワーを吸い取られる。その挙句に5メートルのランナウトトラバースと、ハングの乗越しが待ち構えている。何とかトラバースはこなすが、ここでギブアップ。ランナウトトラバースに気持ちも吸い取られ、ハングは乗り越すことができなかった。ただハング根元のクラックに、チョックストーンを発見。アンダーで掛けられそうだ。 | リジッド・ディグジネイター M6?のルートに取り付いてみる |
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頭上が核心のハング |
その後、交代でリードするが、誰もハングを乗越すことができない。篠原さんは「カナダグレードならM8はあるな」と感想を漏らす。え!M6とM8じゃ大違いだぜ!!アメリカグレードはデシマルと同じで辛いのかなー。しかしとにかく終了点まで行かないことには・・・。テンションかけまくりでハング下まで行き、何とか最後のヌンチャクにクリップ。散々ムーブを探り、フッキングポイントを探して、ひとつの打開策を見つけた。ハング上の中央をはしる広いクラックのど真ん中にどろどろのチョックストーンがある。そこから右手いっぱいで、小さなフックポイントへ。ここで足ブラになるが、クラックの中に左足を突っ込み、強引に乗越していく。あとは度胸一発か・・。 名前もグレードも分からないこのルート。今回の最終目標にするにふさわしい、いいルートを見つけたぜ! |
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M6のスラブ バランシィーなルート |
M6、M7をオンサイト 3月6日。クライミング期間も残り2日。前日の激闘で、フッキングの感覚もだいぶつかめるようになた。時差ボケも完全にとれ、体調は万全。そこでこの日は、M6のスラブを皮切りに、オンサイト劇場の始まり! スパイラル・ステアケースのさらに左奥に、M6のスラブがある。バランシィーなルートで面白いというので、行ってみることに。しかしこれがまたなかなかのルートで、フッキングが決まらない。わずかなピンポイント(まさしくポイント)にバイルとアイゼンをのせ、動かさずにそろりそろりとあがっていく。3本目をとったところで行き詰るが、耐えに耐えて、わずかなエッジに乗り込む。そこから右に1手のばし、今度は左の氷へ。ここからの3手はパワームーブで氷柱に移り、あとは3〜4級程度の氷を登る。危うかったがなんとかオンサイト。でもこれM6じゃないぜ! |
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次はスパイラルまで戻り、そのすぐ右にあるシークレット・プロベイションだ。出だしは小ハングだが、人気ルートのため、フッキングポイントはしっかりしており、かかりもいい。その分思い切ってグイグイ登り、凹角に入る。向って右のクラックは、幅が広く、トルキングではまりそうなので、すかさず左のクラックへ。こちらはかかりがよく、3手ほどで右上の氷に達する。ここまで少々ランナウトするが、氷の状態も悪くないので、さほどプレッシャーは感じなかった。短めのスクリューを1本取り、ところどころ薄い氷を登って垂直部分へ。ここは5級くらいだが、10mないくらいなので、1本スクリューを打ち、あとは気持ちよくアイスクライミング。傾斜がなくなったところで思わず「ホホーッ」喜びの歓喜を挙げた。隣を登ってたクライマーからは、“Good job !”の祝福!なかなか気持ちのよいルートだった。、 | シークレット・プロベイション M7 |
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さあ、明日は最終日。あのルートをレッドポイントできるか!調子はいいし、モチベーションも十分。あとは度胸一発だ!! | |||||||||||||||||||
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やったぜ ちっか!! | |||||||||||||||||||
3月7日。いよいよ今日は最終日。泣いても笑っても、ヴェイルは今日で最後です。気合入ってます。集中してます! 今では慣れた道となったアプローチも、足取り軽く登っていった。すると取り付きには、地元のクライマーと見られる一団が。そのうちの一人が、今からレッド・ブル(M11)を登るのだという。今日まで地元クライマーの、本場のミックスクライミングを見たことがなかった我々は、彼のクライミングにじっと見入った。細身で手足の長い彼は、ヒールスパーを巧みに使い、派手なムーブではないものの、着実にするすると登っていく。最後の最後、2段、10メートルのルーフのホントに最後でテンションがかかってしまったが、見ごたえのあるクライミングだった。 |
エリックのクライミング |
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核心のフールを登るエリック |
早速僕らは、降りてきた彼にこのエリアのルートについて聞きまくった。彼は極東の地から来た、我々日本のクライマーに快くルートを説明してくれた。彼の名前はエリック・マームグリーン。そして、僕らの目標のルートについても聞いてみた。(もし本当にM6程度だったらどうしよう・・)そんな思いもよぎる。しかし彼の答えは、「ここはエンフィビエン(Amphibian)M8だよ」だった!M8か、オクトパシーと同じグレードだ!それなら最終目標にするだけの価値がある。よし、俄然やる気が出てきたぜ!! 今日はもうアップなし、とりあえずフッキングポイントと、ムーブの確認のために、テンションをかけながら、しかし核心のひとつ、5メートルのトラバースは一連の動きで登った。最後、ハングの乗越しで、右手の小さなフッキングポイントがうまく決まらない。少々不安を感じるが、これ以上やっては疲れが残ってしまう。とりあえず終了点にクリップして降りた。 |
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長い休憩の後、プリクリップしようとすると、エリックのパートナーのスタンリーが先にやらせてほしいと言う。快くOKし、彼のクライミングをみることにした。フッキングポイントと、ムーブはほとんど同じ。ただ、途中でバイルのシャフトに肘まで掛けてレストしている。なるほど、ああやるのかー・・。しかし彼もハングの乗越しでテンション。んー、やはりあそこが核心だな・・・。 そしてゆっくりと時間がたち、僕の番がやってきた・・・。 チョンボ棒で1本目にプリクリップ。なんだか緊張しすぎて、気持ち悪くなってきた。登れなかたらどうしよう?城が崎でのクライミングと違い、また来週という訳にはいかない。泣いても笑っても今日限りだ。時間的にも、トライできるのは2回が限界だろう。だとすれば、この1回で決めたい!不安な気持ちを抑え、ロープをハーネスに結ぶ。末端の長さが気に入らない。一度解いて、もう一度結び直す。そして「じゃ、おねがいしまーす!」と、ビレイヤーの梶さんに声をかけ、一手目のポイントにフッキングした。 |
出だしのハングをバランスで越える |
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安定したクラックをたどる |
出だしの小ハングは、バランスをとりながら右にトラバースして越える。一段上がると、安定したクラックがあり、そこにピックを決める。ここまでわずか7〜8手だが、かなりパワーを吸われるセクションだ。少しレストを入れ、プリクリップした1本目を横切る。ここから4本目までは、安定したクラックをたどる。少々フッキングポイントが遠いが、各ポイントは安定していて決めやすいので、思い切ってグイグイ登る。デシマルなら5,9くらいか?ところが早くも腕が張ってきた。「やベー、もうパンプかー!」たまらず3本目にクリップしたところで、クラックにピックを深く差し込み、シャフトにひじまで掛けてレスト。さっきエリックのやり方を見ておいてよかったぜ!ミックスではフリーと違い、レストがしやすい。うまくレストをとりながら登るのがコツか?? | ||||||||||||||||||
ここでクラックは途切れ、大まかなエッジを捉えて登る。さっきリハーサルしているので、ポイントはバッチリ頭に入っている。しかし前腕のパンプは、思っていたより深刻だった。じわりじわりと、背後からお迎えが忍び寄ってくるような感じだ!5本目にクリップし、その上のクラックへピックをねじ込む。再びひじを掛けて、レスト。そのときシャフトが“かたっ”と動いた。やべっ!!ひじを掛けたままで、ピックをもっと奥へと差し込む。「がー、パンプがとれねー!このままでいけるかー??」この先は例の5メートルのトラバースだ。よれた腕ではちょっと怖い!もしもトラバースの最後でピックが外れたら、そのまま隣のルート(さっきエリックが登ってたルートだが・・・)までぶっ飛びそうな感じだ!!“いっそここでピックが外れてくれたら・・。”そんな思いまで頭をよぎる。ここまで登ってきて、僕は完全に弱気に支配されてしまった。 | シャフトに腕まで掛けてレスト |
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気合でトラバース! |
しかし、僕は結果がほしかった。今回コロラドでここを登った!という確かな結果が、どうしてもほしかった。決して裕福ではない(ほとんどのクライマーはそうでしょうが)我が家の家計の中、妻は快く今回のコロラド行きをOKしてくれた。おまけに、出発前には靴まで新調することにもOKしてくれた。今回は無理ばかりを言っての出発だった。そして今、一人さびしい部屋で留守番をしてくれている。それなのに、ここで落ちるわけにはいかない!今回ばかりは落ちるわけにはいかないのだ!!こうなったら、落ちてぶっ飛んでもかまわない(とは思わなかったが・・。)たった5メートルのトラバースだ。その先にはぽっかりと安定したクラックが口をあけて待っている。そこまでいけばレストできる!!大きく息を吸い込み、「しゃあ!!」気合を一発入れると、トラバースへのりだした。 | ||||||||||||||||||
この気合で、下にいたエリックたちも、僕のクライミングに注意を引かれたようだ。“Come on!”声援を送ってくれている。「ガンバ!」日本語の応援も聞こえる。おっしゃ!今まさしく、僕にとって、ここはディジグネーター“円形劇場”と化した。 トラバースは思ったほど難しくはなく、クラックへ到達。右手でトルキングっぽくバイルを決め、クリップ。そこから3手がんばって、ハングの根元へ入り込んだ。腕はもうパンパンだ。最後のランナーを前に、たまらずレスト。ここまでくるとさすがに胸も高まってきた。“落ち着け、落ち着け。”自分に言い聞かせる。呼吸を整える。かなり長くレストしたような気がする。よし、いくぜ!。ハング下のチョックストーンにアンダーでバイルを決め、最終ランナーにクリップ。もう |
核心のハングへ向う |
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左足をねじ込みハングを越える |
再度トライするだけのパワーは残っていない。これが最後のチャンスだ!あとは度胸一発。「クソッタレー」そう叫ぶと、身を乗り出し、ドロドロのフッキングポイントへ。さらに右手をいっぱいに伸ばし、小さなエッジを目指す。さっきは決まらなかったが・・・。“頼む、外れないでくれ!もちこたえてくれ!!”左足を引き上げ、クラックへねじ込む。左のバイルを砂埃の乗ったエッジに差し込む。決まらない!もう一回。もう一回。微妙なフッキングで体を引き上げる。まだ体は不安定だ。“落ち着け!”左に氷柱が見えた。壊さないようにバイルを打ち込む。左手、右手。もう一度左手・・・。決まった。体も不安定な状態から開放された。終わった・・・。右手でビレイ点にクリップ。「やったぜ、ちっかー!!(カミサンの名前)」“円形劇場”に響きわたるような声で叫んだ!! | ||||||||||||||||||
テンションをかけてロワダウンしていく。今までの激闘が嘘のようにどんどん降りていく。あ、あそこでレストしたな・・。あのフッキングポイントこんなに大きかったんだ・・。よくこんなのに引っ掛けてたなー。なんだかこのルートが懐かしくさえも感じる。再び地上に足が着くと、壁の取り付きから10メートルは離れていた。こんなにかぶってたんだなー。あー、落ちなくてよかったぜー!ほんとにやったんだー!登ったんだー!じわじわと喜びが沸いてきた。 エリックをつかまえ、一緒に写真を撮ってくれと頼む。彼は快く引き受けてくれた。一緒にカメラに収まる。思わずガッツポーズ。もううれしくてたまらなかった。 そのあと、篠原さん、梶山さんも1回ずつトライし、今回のコロラドクライミングは終わった。そして心地よい疲労のもと、ディジグネイター“円形劇場”をあとにした。 |
レッドポイント後エリックと記念撮影 |
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ディジグネイターをあとにする |
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おまけ | |||||||||||||||||||
デンバー国際空港 延期が決まり空港で再度宴会?? |
一夜明けて帰国の日。デンバーは朝から小雪に見舞われた。ヴェイルでのクライミング期間中よく晴れてたなー。そんな思いが頭をよぎる。ほんと今回は天気に恵まれたなー。ありがとうヴェイル、ありがとうコロラド。おかげでほんとにいいクライミングができたよ。また機会があれば、来てみたいね。今度はユレイや他のエリアにも。 空港でのチェックインもスムーズに終わり、みやげ物を物色しながら、フライトを待った。と、、なにやら梶山さんがあわてた様子でゲートに向ってきた。「どうしたの?」「僕らの飛行機がキャンセルになってる!」「え?」「帰れないんですよ!!」「はあ??」何がなんだか分からない。とにかくサービスカウンターへ行き、聞いてみると、やはり僕らの便は飛ばないと言われた。梶さんが必死に受付のオペレーターと交渉。しかし、今日中に日本へ帰れる見込みはなくなった。サンフランシスコ経由のはずが、ロサンゼルスでもう1泊するハメに。僕らのコロラド遠征はこうして1日伸びたのでした・・・。 |
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という感じで今、1ヶ月近く前になったクライミングを、懐かしく思い起こしながら記録をまとめてみました。次回は、6月と9月に予定しているヨセミテの報告をする予定です。 今回はどうも長々とご静聴ありがとうございました。 ではでは・・・・。 (「え?2回もヨセミテ?!聞いてない!」 ・・妻より) (タラー・・・。ポリポリ・・・。 何もいえない夫、・・・。) |
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